現在の日本において後期高齢化が進むなか、「ユニバーサルデザイン(UD)」という言葉を耳にする機会が増えています。
近年、自動販売機やお手洗いなど様々な場所でユニバーサルデザインを見かけるようになってきていますが、実際には、
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ユニバーサルデザインと聞いても、具体的にどんなものなのかピンとこない
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バリアフリーとの違いがよく分からない
と感じている介護施設のオーナーや医療関係者も少なくありません。
本稿では、ユニバーサルデザインの本質と、介護施設における具体的な環境整備ポイントを、経営・現場双方の視点から解説します。
ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、1980年代にアメリカの建築家ロナルド・メイスが提唱した概念で「特別な調整や追加なしで、できる限りすべての人が利用できるデザイン」を指します。
重要なのは、「特定の人向けに特別対応する設計」ではないという点です。
高齢者、障がい者、子ども、外国籍の方、ケガをした人など、“誰もが一時的にでも弱者になり得る”という前提で設計する考え方です。
バリアフリーとの違い
両者は似ていますが、目的が異なります。
● バリアフリー
バリアフリーは、主に高齢者や障がいのある方など、特定の対象者が日常生活を送るうえで直面する“障壁(バリア)”を取り除く考え方です。
既存の環境に不便や危険があることを前提に、それを解消する形で対応していきます。
例えば、
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段差を解消する
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階段の横にスロープを設置する
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トイレや廊下に手すりを追加する
といった対応が代表例です。
すでにある不便さを“取り除く”というアプローチであるため、対象者が比較的限定されることも特徴です。
● ユニバーサルデザイン
一方でユニバーサルデザインは、年齢・性別・障がいの有無・国籍などに関わらず、最初からすべての人が使いやすいことを前提に設計する考え方です。
特定の人に合わせるのではなく、「誰もが一生のうちに不便さを経験する可能性がある」という視点に立ちます。
例えば、
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エレベーターの設置
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センサー式蛇口
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直感的に理解できるピクトグラム表示
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自動ドア
などが挙げられます。
これらは高齢者や障がい者だけでなく、荷物を持っている人、子ども連れの人、けがをしている人など、あらゆる利用者にとって利便性を高める設備です。
ユニバーサルデザインの7つの原則

ユニバーサルデザインには、設計や環境整備を行う際の指針となる「7つの原則」があります。
これは、特定の形や設備を指すものではなく、「どのような視点で考えるべきか」を示した考え方です。
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公平性(誰でも利用できる)
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自由度(複数の方法を選べる)
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単純性(使い方が簡単)
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わかりやすさ(情報が直感的)
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安全性(危険につながらない)
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身体的負担の少なさ
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十分なスペースの確保
重要なのは、これらすべてを完璧に満たすことではありません。
施設の規模や利用者の特性に応じて、いずれかの原則に沿った施工を一つずつ積み重ねていくことが現実的かつ効果的です。
小さな工夫の積み重ねこそが、利用者とスタッフ双方にとって使いやすい環境づくりにつながります。
介護施設でのユニバーサルデザイン実践例
ユニバーサルデザインは理念として理解していても、「具体的に何をどう変えればよいのか」が見えにくいという声は少なくありません。
ここでは、現場で実践しやすく、かつ効果の高いユニバーサルデザインの具体例を解説します。
トイレ環境の工夫
介護施設のトイレは「広い=使いやすい」とは限りません。
実際の現場では、空間は確保されているものの、便器の位置や手すりの配置が利用者の身体状況に合っておらず、結果として介助が増えてしまうケースが少なくありません。
特に、片麻痺のある利用者や車椅子利用者にとっては、移乗方向が限定されていることが大きな負担になります。
施工例としては、
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左右どちらからも移乗できる配置
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高低差のある両側手すりの設置
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センサー式蛇口の導入
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写真付きトイレ表示(認知症配慮)
などが挙げられます。
これらは大規模な改修を伴わなくても実施できるものが多く、配置や表示、手すり位置の見直しだけでも転倒リスクや介助負担を大きく軽減できます。
食堂・ホールの環境整備
食堂やホールは、単なる食事の場ではなく、入居者同士の交流やレクリエーションが行われる「施設の心臓部」といえる空間です。
ユニバーサルデザインを取り入れることで、施設全体の雰囲気や入居者の満足度が上がることが期待できます。
例えば、テーブルの高さが固定されている場合、小柄な方や車椅子利用者には不便が生じます。
また、椅子の構造によっては移乗動作が困難になり、介助が必要になることも。
施工例としては、
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高さ調整が可能なテーブル
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回転式椅子の導入
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杖ホルダー付き椅子
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滑りにくい食器
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片手でも使いやすい器
などが考えられます。
これらは単なる利便性向上ではありません。「自分でできる」という体験を増やすことが、自立支援と尊厳保持につながります。
バルコニー・テラスの活用
介護施設では、入居者が室内にとどまりがちになることが課題となります。
外気に触れる機会が減ると、活動量や意欲の低下につながる可能性があります。
そこで重要なのが、バルコニーやテラスの活用です。
施工例としては、
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車椅子でも通れる出入口の確保
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スロープと手すりの併設
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立ち上がり花壇の設置
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握らずに使える園芸道具の導入
などがあります。
こうした環境整備により、園芸療法などの活動を取り入れることが可能になります。園芸療法には、
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情緒の安定
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利用者同士のコミュニケーション促進
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身体機能の維持・向上
といった効果が期待されています。
外の光や風を感じられる空間は、利用者の心理的な開放感を生み、施設生活に活力を与えます。
情報のユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインは、設備面だけでなく「情報」にも及びます。
施設内の案内表示や業務システムも、誰にとってもわかりやすい設計が求められます。
具体的には、
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ピクトグラム表示の活用
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多言語併記
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音声案内の導入
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音声入力システムの活用
などが挙げられます。
特に介護記録の音声入力化は、職員の業務効率化に大きく貢献します。
キーボード操作が苦手な職員でも直感的に記録できる仕組みは、記録負担の軽減や残業削減につながります。
ITが苦手なスタッフでも使いやすい設計は、人材確保や定着率向上の観点からも極めて重要です。
経営視点で考えるユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザインは単なる設備施工ではなく、長期的な経営安定につながる「投資」と捉えるべき施策です。
転倒リスクの低減は医療費増大や訴訟リスクの回避につながり、安全管理の強化という意味でも重要です。
また、動線や設備の工夫によって職員の身体的負担が軽減されれば、離職率の低下や採用コスト削減が期待できます。
さらに、家族にとって安心できる環境は施設評価の向上につながり、稼働率にも好影響を与えます。
安全性と快適性を高めることは、結果として「選ばれる施設」になるための基盤づくりです。
ユニバーサルデザインは、施設ブランド価値を高める戦略的な経営施策といえるでしょう。
まとめ|想いをカタチにするユニバーサルデザインへ

ユニバーサルデザインは、入居者の安心と尊厳を守り、スタッフが働きやすく、地域から信頼される施設をつくるための“経営基盤”です。
とはいえ、理想を掲げるだけでは実現できません。
医療・介護の現場には、診療内容や介護度、スタッフ動線、地域連携など、個別に考慮すべき要素が数多く存在します。
だからこそ、設計段階から「運営」まで見据えたトータルな視点が重要です。
THE LABOは、「想いをカタチにするトータルコンサルティング」を掲げ、医院建築を中心に、建築に関わるすべてを支援しています。
医院建築はもちろん、福祉施設やグループホームの設計・施工、土地活用まで一貫してサポートし、診療動線や医療設備計画を踏まえた専門性の高い空間づくりを行っています。
資料請求やオンライン相談も可能ですので、理想の施設像を具体化する第一歩として活用してみてください。